Special Interview

桜井貴斗氏スペシャルインタビュー

001:Kimi Suzuki


HONE代表:桜井貴斗さん(以下:桜井)
SELECT EYE COMPANY代表:鈴木功始(以下:鈴木)
chauru director:鈴木希実(以下:希実)



鈴木:
セレクトアイカンパニーの次を担っていく人です。セレクトアイカンパニーの中堅は、新しく会社を引っ張っていく人の代表になります。彼女は最年少の店長です。
桜井:
そうなんですね。店長になられたのはいつなんですか?
希実:
4年くらい前ですかね。
桜井:
結構お若くして店長になられたんですね。入社されて5年目くらいですか?
希実:
そうですね。
鈴木:
普通は店長がいなくなると繰り上げで店長になりますが、彼女は「店長になるためには必要なスキルは何か?」を考え自分で勉強していました。店長になって4年間で大きく成長したと思います。初めはわからないので見よう見まねでしたが、今は確信を持って仕事をしていると思います。
希実:
最初は先輩が抜けてチャンスをいただいたと思いましたが、実際店長になるとどうしたらいいのかわかりませんでした。社長や周りの先輩から助けてもらい、だんだんチームを作ること、後輩を育てること、どうしたら同じ目標に向かうことができるのか、商品の方向性などについて自分の意思を持って行動できるようになってきました。
鈴木:
一個ずつだよね。田植えと一緒で、1年に1回しか経験できないものもあるので、今やっと一通り経験して実践から身についたところかな。
希実:
今までは目の前のことでいっぱいいっぱいでしたが、やっと長期的な目線で見ることができるようになってきました。「こういう店にしたい、こういうチームにしたい」から何をするのかを逆算して考えられるようになりました。自分の核ができたので、それを後輩にどう伝えるかなど、この1年は特にコミュニケーションを学ばさせていただきました。挑戦して経験したから自分のものになるということを感じ、この1年でノウハウを作れたかなと思っています。
桜井:
元々仲間を集めてみんなでやっていきたいという想いはあったんですか?
希実:
「チームで働きたい」という想いはありました。お店ごとのチームで働くのでみんなで喜びを分かち合うことができ、自分1人じゃできなくてもチームだからできることがたくさんあるということがわかりました。リーダーになって、みんなが同じ熱量で向かうということはどういうことなのかをよく考えました。私は自分1人で頑張っても達成できないこと、チームみんなが頑張れば自分の力が100%じゃなくても達成できることを経験しました。人と密に関わるようになってから、人の可能性や成長を実感しています。
桜井:
経験の中で、どうやって人を巻き込んでいくかがわかってきた感じなんですね。それまでは想いはあってもどうやって人を巻き込んでいけばいいのかわからないこともあったんだと。具体的にはどのような経験がノウハウに変わってきたんですか?
希実:
どん底を味わってからですかね…。やりたい気持ちはあるのに結果がついてこない期間がすごく長くて。。コロナの影響もあったんですが、自分の未熟さをすごく感じました。私が任せてもらっているお店はセレクトアイカンパニーの中でも歴史があるお店で、自分の代で終わらせたくない。けれど終わってしまうかもしれない、というくらいどん底でした。その状況を立て直すと決めたところからノウハウに変わってきたと思います。
鈴木:
その店舗自体は20年の歴史があります。店長の元で仕事をしているときは、自分のことを考えずに店舗のため、先輩のために働いていたのでわかりやすかったんだと思います。ただ、先輩がいなくなり、どういうふうにやっていくかは自分の意志がないと難しいです。初めは見よう見まねで仕事をしてもそれは形だけで、中身がないからどうしても人に依存をしてしまいます。それが解けて「自分の意志で行動する」と決めたのがスイッチだと思います。入社時から社会のために、人のためになりたいということを言っていたので、それがずっと一貫しているんです。人のために下から支える位置から、上になってわからなくなったんだと思います。下から支えるのではなくて下を巻き込むということがどういうことなのかわかってから変わってきました。
桜井:
店長になると権限も含めてできることが増えると思います。実際に店長になったとき、自分が理想にしていたリーダーや店長像と何かギャップはありましたか?
希実:
先輩に憧れて入社したので、「憧れの先輩のようになりたい」と思っていましたが、なれませんでした。そのときに、私と先輩は違う人間なので「私が先輩になることはできない」と気がつきました。自分は自分のリーダー像を作っていけばいいんだなということに気づいたときにとても楽になりました。
桜井:
憧れの先輩像に縛られていた時期があったんですね。
鈴木:
ファッションに携わっていると、洋服が好きだとかスタイルがいいだとかわかりやすい外見に最初は憧れると思います。そこからだんだんと中身があることに気づき、そして中身があっての外見なんだということに気づいたんだと思います。
希実:
そうですね。キラキラ輝いている先輩たちのキラキラは外見だけじゃなくて、上を目指して成長しようという内側からの輝きから来るものなんだなというのがわかりました。
桜井:
希実さんが一回落ち込んで、そこから前向きになることができたのは何かきっかけがあったんですか?
希実:
自分の仕事に対して反応や結果がついてくるようになったことだと思います。社長には「自分の直感を信じることでその直感を正解にすることができる」というメッセージをもらいました。今までは自分が感覚的に思うことを信じられなかったから、周りに依存していたと思うんです。でも自分の直感を信じてやってみたら、それを正解にするための熱量や行動が増え、結果がついてくると徐々に自信になってもっとこうしたいと思うようになりました。
鈴木:
うちの発注は完全買い取りなので、年に4,000~5,000万円発注します。若い人からすると、家を1棟買うくらいのかなり大きな金額を発注するので、なかなか自信が持てないんです。自信を持てない中でも直感を信じ、その直感を正解にするチームを作る必要があります。彼女は自分の直感を信じ、チームを作ろうとしました。同じ気持ちになるため後輩たちと向き合ったと思います。それも自信につながったと思います。ずっと上司から見ていい子だった人が上司になって自分とは真逆の子が部下になり、どうすればいいのかを自分で乗り越えたことは自信になったと思います。そういう環境は誰にでもあるわけありません。店長が抜けたり、コロナ渦だったりとこちらから見ててもハードルは高かったと思います。それに向かった意志と後輩と向き合えたというのはものすごく強かったですね。
桜井:
後輩の皆さんは希実さんとは違ったタイプだったんですね。
希実:
今はお互いを助け合える関係なんですが、当時の考え方は全く正反対でした。
桜井:
助け合える関係性は対話する中で築いてきたんですか?
希実:
その子と向き合うと決めた時から、きちんと意見を聞こうと思い実践しました。今までは「自分がこうしたい!」と思ったら突き通してしまっていて…。でもチームで動くって自分だけじゃなくて、チームの意志として進まなくてはならないと思うんです。本気でぶつかれば相手も返してくれるし、じゃあどうしようかという話し合いができます。今までは人と向き合ったりぶつかったりするのは怖くてできませんでした。でも徐々に一緒に仕事をする中で、良いことも悪いことも共有して少しずつ価値観を合わせる作業をしていきました。その中で、「私はここが苦手だからやってくれると助かるな」と言って仕事を任せたことがあったのですが、そのときにその子がとてもやりがいを持って取り組んでくれた姿をみて、責任を持ちたかったんだなと気がつきました。その子は「頑張りたい」という想いもエネルギーも持ってるのに、それを発揮する場を私は作れていませんでした。
鈴木:
うちは下の子と組むことで、下の人はもちろん上の人も学びます。上の人の方が成長するんじゃないかな。上の人は意志がないといけないのですが、彼女は一貫して人のためになりたいという意志がブレていません。
桜井:
その思いは学生時代からなんですか?
希実:
そうですね。学生よりももっと前、幼い頃に生死を分けるような大きな手術をして、その時から「もらった命」という意識があります。両親からは、「生きられなかった命をもらったのだから、あなたは社会の役に立ちなさい」と言われていました。
鈴木:
普通は世の中に染まってしまうと思いますが、染まらずにずっとそれがブレずにきているんです。うちはそういう価値観を大事にしているので、そこは相性がよかったですね。
桜井:
就活中、希実さんはセレクトアイカンパニーのことは知っていたんですか?
希実:
当時は知りませんでした。実家は長野県で、進学で静岡県にきました。静岡県で就職したいとは思っていたのですが、具体的にどんな仕事をしたいかはありませんでした。両親は長野県に帰ってきて金融や公務員、大企業に勤めてほしいと思っていたみたいなんです。たまたま参加した静岡県の合同企業説明会で初めてセレクトアイカンパニーを知りました。当時は人の役に立つ仕事というと、看護師や医者、ボランティアなどしか浮かばなかったんですが、社長の「自分の感性を磨くことで自分と自分の周りの人を幸せにできる」というお話を聞いて、自分のモットーと一致する会社だと感じました。
桜井:
そこでビビッときたんですね。
希実:
はい、直感でこの会社で働きたいと思い入社しました(笑)。両親からはあまりよく思われなかったと思いますが、自分の意志で決めたことですし、自分の人生なので、それこそ自分の直感を正解にしていこうと思いました。
桜井:
かっこいいです…!
鈴木:
ご両親が「国立大学を出たのにショップ店員をやるの?」と思うことは容易に予想できるので、彼女のイメージする「正解」を失望させないようにしなければならないと思っています。入ってくる社員によって先輩や会社自体も成長していきます。2年でも3年でも、関わってくれる人の人生をお借りするので、入ってくる人を失望させないというのは会社の使命です。自分よりも一回り二回りも年下の人と接していると、とても刺激を受けます。彼女の夢を実現するために応援しています。
桜井:
そこまで頑張っていたら応援したくなりますよね。そこからブレずに9年間お仕事されてらっしゃるんですね。今の自分を形成している原体験は、先ほどの生死を分ける手術やご両親の教育というのが大きいんですか?
希実:
自分のモットーを作ってくれたことや過去のこと、両親の影響が大きくあると思うのですが、こんなに頑張れるのは仲間がいるからだと思います。私は自分のために頑張れないんですよ。
桜井:
誰かのために役に立ちたいという気持ちがすごく強いんですね。モットーを持って10年近くやられていれば後輩・先輩ともに刺激を受けそうです。
希実:
私はとても恵まれていると思います。助けてもらえるというか、この環境だからだなということをすごく思います。自分の足で立っていられるようになったのは最近ですが、一緒に頑張ってくれる仲間がいるから頑張れる、そう思うと自分はすごく恵まれているなと思います。
桜井:
元々周りには頼りやすい性格だったんですか?
希実:
私はどちらかというと先頭を走るより後ろにいたいタイプなんです。この先輩のために頑張る、というかすごいわかりやすかったですね。
桜井:
リーダーシップよりもフォロワーシップなんですね。元々は2番手として組織を支えたり調整をしたりだとかの方が得意なんですね。
希実:
どちらかというとそっちの方ができるかなと思います。自分は表に立てないですね。
鈴木:
このタイプの子がうちに多いのですが、こういうタイプの子をリーダーにすると、リーダー気質の子よりも細部に気が付くので組織がうまくいくんですよ。その代わりに苦手を補うメンバーをいっぱいくっつけてあげないとダメだけどね。本当の意味で人のため、社会のためになるには自分が立たなければならないということに気づいたのはすごく強いと思います。
桜井:
自分の強みと弱みがちゃんとわかると、誰かに頼ることもできますよね。先頭に立つことで見えてきた景色もあるんですね。
希実:
すごく未来が楽しみになりましたね。
桜井:
フォロワーシップよりリーダーは未来を見ないといけないポジションなので、そこを見据えることも増えてきたんじゃないですか?
希実:
今までは自分がどうすればいいのかわからないタイプだったので、自分のこうしたいが少しずつ見えてきて、そう思える場面が増えてきました。
鈴木:
仲間がいてチームで動くから、より自分の目指すものが無理ではないと思えるようになるんです。
希実:
できることの可能性が広がるというか、これしか見えていなかったところがもうちょっと見えるようになるというか。
桜井:
それはメンバーの得意不得意を知らないとできないことですよね。
希実:
私たちの仕事は、ものを売るとかじゃなくてお客さまと信頼・信用をつくって重ねていく仕事だと思っています。社長はよく、売るものはなんだっていいとおっしゃいます。自分のお店はアクセサリーやコスメなど生活に関するものを広く扱っているのですが、自分がいいと思ったものがなんだったとしても、そこで関係がきちんと築くことができていれば買っていただけるんです。お客さまと信頼・信用を築くことと仲間と信頼・信用を築くことは同じだなと感じるようになりました。
桜井:
お客さまもチームもやることは一緒なんですね。信頼・信用を築くために心がけていることや行動していることはありますか?
希実:
私はリーダーになっても偉い人になりたいわけではないので、自分が一番動くように心がけています。この人は行動しているから信じようというか、言葉に信頼度が増すと思うんです。
桜井:
どかっと座っているようなことはしたくないということなんですね。
希実:
「心は高く身は低く」ですね。これは高校の理念なんです。口だけにはなりたくないと思います。
鈴木:
こういう人って巡り合わせが良くないと居場所がなくなってしまうんですよね。意外と生きづらいと思います。もっとうまくやれよみたいな。でもこういう人に僕は気付かされることがあるので、こういう人の方が好きなんです。
桜井:
上の人も刺激を受けますよね、キリッと背筋が伸びる感じ。
鈴木:
後輩に気付かされて育てられて、後輩が同じ方向を向いてくれた時は嬉しいよね。同じ目標に向かって自分に意見を言ってくれることが一番嬉しいです。
希実:
そうですね。今まではなんとか自分が頑張らなきゃと思って100%の力を使っていたのが、後輩が成長したおかげで60%でも達成できるようになりました。人の力ってすごいなと思うし、今までと嬉しいと感じるポイントが変わりました。
桜井:
みんなで頑張る方が喜びも大きいということですね。リーダーシップとフォロワーシップの両面を持ち合わせていると、新しいリーダー像になりそうですよね。自分の殻を破って新しいリーダー像を作っている真っ最中なんですね。
鈴木:
今までは声が大きくてグイグイ引っ張っていくタイプが良しとされ、成功しやすかったですよね。でも今の若い子や時代ってそういうことに対する拒絶があり、下の子がこうなりたいという像を抱きにくくなってしまいます。キミさんのような人の方がリーダー像として今の時代に合っていると思います。このタイプで成功して欲しいですよね。このタイプで成功したらセレクトアイカンパニーは変わると思います。
桜井:
本当にそうですよね。変わると思います。こういう方がリーダーになっていろんなことを変えたり、もっと大きくして欲しいなと思いました。2〜3年後にこうなっていたいというイメージは何かお持ちですか?
希実:
自分のお店が入っているDen bill全体をもっと輝かせて人が集まるところにしたいし、自分とここで働きたいという仲間も自分たちで集めていきたいと思っています。
桜井:
とても刺激を受けました。本日はありがとうございました。